カギが人の生活にとってなくてはならないものです。その重要性は文明が進歩していくのとともに上がり続け、現代社会はあらゆる意味で「カギ」によって成り立つ社会となりました。情報産業では「カギを持っている人間がこの世で最も大きな力を持つ」とまで言われるようになりました。
実際のカギについては重要であることに変わりはありませんが、ひと昔前とは様相が変わってきたことも事実です。特に生体認証システム導入による「キーレス化」はその最たる例であり、いわゆる従来のカギではなく、「個人を特定できて複製が難しく、持ち運びにおいて簡便で、基本的に紛失の危険がないもの」がカギとして使用されるようになったのです。
これは如何に技術の粋を集めて作られた錠前であっても、それを上回る技術によって解錠されてしまう可能性があることや、安全なカギほど緻密な構造を持つために耐久性が犠牲となり、トラブルに見舞われやすくなるというリスクを抱えること、さらにはコストパフォーマンスやセキュリティー性能において優れた錠前は、広く受け入れられて普及する分、研究され、解錠道具が開発されやすいというジレンマがること、そして多大な費用をかけて開発された高性能の錠前も、ひとたび解錠技術が開発され、それが広まってしまえばもはやカギとしての生命を失ってしまうことなどが、複合的に重なったために起きている流れであると言えるでしょう。
指紋や網膜パターン、果てはDNA認証まで、まるでSFの世界から抜け出してきたような世界生体認証システムの技術ですが、既に一部では実用化が進んでいます。もちろん、いまだに問題も多く、それ単体でのセキュリティー性能や運用面での利便性はまだまだ改良が必要ですが、それでも今後の防犯システムの要として、こうしたテクノロジーやシステム導入されていくことは間違いないでしょう。鍵屋がカギをなくす日もそう遠い将来ではないのかも知れません。